転職で「何者」になるのか
『何者』
読んだ時はたしか、社会人2年目だったかな。
読み進めながら「就活の時に読まなくてよかった」とこっそり安心した記憶がある。
そのくらい、読んでいて気分のいいものではなかった。
何がそんなに不愉快だったかって。
誰も(特に私たちのような当たり前にSNSがある世代)が、生きている間に一度は抱く、あるいは抱いてきたであろう心の醜い部分をそれぞれに凝縮したような人たちが物語を進めていくのだから、読んでいるこちらはたまったものではない。
1ページ捲るごとに自分に特大ブーメランが飛んでくるような感じ。
思い出しただけでもじんわり辛い。
(映画もそれをよく実写化しているようです、観た方いますか?)
共感できる、できすぎる。
そういう部分が『何者』の素晴らしさであり、魅力なのだと思う。
人に勧めたくはない良作っていうポジション。
今日は書評を書きたいのではなくて、転職活動に勤しんでいる身として、急にこの作品のことを思い出したわけだ。
転職を始めるにあたって最初にぶち当たった壁が、
転職によって自分は何を叶えたいのか。
仕事をどう捉え、プライベートへの侵入をどこまで許すのか。
仕事を通して何を得たいのか、実現したいのか。
一生働く気でいるのか。
女性としてのキャリアプランは?ライフイベントは?
なんでその業界、職種がいいのか。
っていう、大事なのはわかるけどじゃあ何が正解なのって言いたくなるようなあれこれについて考えること。
要は、自分は何者になりたいのか、を言語化する作業。
時間があるのだから四六時中考えられそうと思われるかもしれないが、私は最初、とにかくこれらのことから逃げてきた。
なんでか?
端的に言えば、プライドが邪魔をしていた。
っていうか、普通にプライドに負けていた。
上に書いたような項目について思考し、行動していくためには、今できていない事実を認めて、改善または手に入れるための手段を考える必要がある。
今と未来を客観的に見つめて、自分の現在地を知らなくてはいけない。
それは必然的に、自分の弱さ、できなさ、未熟さと対峙しなくてはならないことを意味する。
やりかたは頭ではわかっていても、心がそれを受け入れてくれなかった。
だから、最初はネットで検索しまくった。
志望動機、転職理由、業界の魅力、キャリアプラン…。
思いつく限りの組み合わせで検索をかけて、検索結果と自分の共通点を探して応募した企業に合わせて内容を作って面接に臨んでいた。
まあ、結果は全敗したわけだけど。
そりゃそうだ。その企業に本気で就職したい人に対してカンニングのようなことをして臨んだ自分が勝てるわけない。
書類の通過率は良い。でも面接には通らない。
理由は「社風に合わないため」だとか「ポジションへの適正が見られないため」だとか「ストレス耐性に難あり」だとか、まあ、結構辛辣だなという感じ。
そんなことが10社以上続いて、最初は1回1回凹んでたけれど、それではメンタルが保たないことに気づいて落ち込むのをやめた。
大体、落ちた時の面接は自分でも「アッ、これはなんか微妙な感じだ」とか「この会社は合わなそうだな」っていうのを感じているのだから、お互い様だ。
そんな状態の人間が「御社が第一志望です!」なんてキラキラの笑顔で言えるわけもない。
んで、最初の話にある、転職を通して私は何者になりたいのかっていうことだけれど、これが不思議と、面接を重ねることで見えてきた。
それは、面接中にふと口をついて出てきた言葉が自分の本音だったと気づいたり、面接官からの言葉から自分の優先順位が見えたりと、いろいろ。
面接で上手く答えられなかった質問はエージェントと共有して対策を練ったことも大きかった。
少しずつ自分の転職後の姿が見えてくるのが面白くて、こういうことができたらいいなとか、こういう業務内容なら多少辛くても頑張れるかなとか、前向きに未来のことを考えられるようになったのだと思う。
自分でああでもないこうでもないと考えることも必要なんだけれど、考えているのではなく悩んでいるという状態に陥りがちだなと反省もした。
(『何者』の作中に「頭の中にあるうちは傑作だ」というようなセリフがあったような…。
私は今のところ(少し乱暴な言い方をすれば)、一生働けるだけの力が欲しい。
その状態に近づくために今回転職したい。
ということをもう少し練って、今後はもっと素直に言葉にしていこうと思っている。
ここでいい報告ができるように頑張ります。